静かな昼下がり。
ソラ君は、縁側に座ってぼんやりと空を見上げていた。
風がカーテンをふわりと揺らし、柔らかい光が部屋の中を優しく包む。
チャトラが声をかけた。
「……ソラ君、どうしたん?ぼーっとして」
ソラ君は少し首をかしげて、ぽつりとつぶやいた。
「なんかさ……『自分って何者なんだろう』って思ってて」
チャトラは隣に腰を下ろして、しっぽをそっと重ねた。
「なんでそんなこと、思ったん?」
ソラ君は、少しだけうつむきながら答えた。
「最近ね、『ただの猫じゃん』って言われたの。……それが、なんだか胸に引っかかって」
モノもそばに来て、小さくうなずいた。
「その言葉、なんか刺さるよな。『ただの』って、誰が決めたんやろな」
比べることで見失った、自分の輪郭
「うらやましかったんだ」
ソラ君はぽつりと言った。
「チャトラは、堂々としてて。モノは、やさしくて。」
「わたしは……目立たないし、特別なこともない。 なのに、みんなが大事にしてくれるのが、申し訳なくて」
チャトラは、ふわりと笑った。
「でもな、ソラ君。『大事にされる理由』を、見つけようとする必要ってあるんかな?」
モノも続けた。
「存在してるだけで、十分なんやて。そこに『居てくれる』ことが、どれだけの安心か……」
ただ、そこにいるだけで意味がある
ソラ君は、目を少しうるませながらつぶやいた。
「……そう思っても、すぐ忘れちゃうんだ。また、『僕なんて』って思っちゃう」
チャトラは、優しく肩をぽんぽんとたたいた。
「それでええやん。忘れても、また思い出せばえ〜て。何回でも、何回でもな」
モノが笑った。
「思い出すたびに、ちょっとずつ信じられるようになるんや。『僕は、ただの猫じゃない』ってな」
ソラ君は、ちいさく笑った。
空を見上げるその目は、さっきよりもずっとまっすぐで、あたたかかった。
モノとチャトラより、あなたへ
- わたしたちは、誰かに認められた瞬間に価値が生まれるんじゃないんだにゃ
- あなたが『存在してる』こと、それだけで、誰かの安心であり、希望なんだにゃ。
- どうか忘れたら、また思い出して。
- あなたは、『ただの』なんかじゃないんだにゃ。You are オーセンティック。
筆者のことば
わたし自身も、昔は「ただの主婦」「ただの会社員」と自分を小さく表現していました。
まるで「特別な才能や役割を持っていないと、存在する意味がない」と思い込んでいたんです。
でも心理学では、人がもっとも深いレベルで求めているのは「存在承認」(承認欲求の一つです)──つまり「何かをしたから」ではなく「そこにいてくれるから大切だ」と
感じてもらうことだと言われています。
これは幼少期に親との関係で育まれる「無条件の愛」の延長でもあり、大人になっても私たちの心を支える根幹です。
逆に「条件つきの価値」──役割や成果によってしか認められない環境に長くいると、やがて自分で自分を「ただの〜」と評価してしまいます。社会学者も「比較の文化は、自己価値の侵食を生む」と指摘しています。
けれど、存在にはそもそも『ただ』なんてつかない。
哲学者カール・ロジャーズも「人は存在そのものが価値である」と語っています。
誰かが笑顔になれたり、安心できたりするのは、あなたがそこにいて呼吸しているからこそ。特別さは「成果」ではなく「在ること」から生まれるのです。
もちろん、「私なんて」と思ってしまう瞬間は何度もある。
でも、そのたびに「それでも私はここにいる」という事実を思い出せばいい。
忘れても、また思い出せばいいんです。繰り返すうちに、それが少しずつ心に根を張っていきます。
どうか自分を「ただの」と卑下しないでください。そして、大切な人にも「あなたは特別だよ」と伝えてあげてください。わたしたちは皆、この世界を形づくる大切なピースであり、欠けてしまっては全体が成り立たない存在なのです。
今日、あなたが呼吸していること自体が、この世界にとってかけがえのない意味を持っています。
🕊 心のワーク
- 「わたしは『ただの〇〇』じゃない」と言葉にしてみましょう。
- 自分にとっての『意味のある存在』って誰?その理由も書いてみて。
- その理由に気がつけたのはあなたにはその一部が存在するから。あなたの魅力を自分で考え直してみて。
チャトラのも見つけました
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悩んだとき。
ひとりで抱え込みそうなとき。
まだ「相談」と呼べるほど、言葉になっていないとき。
自分の本音がどこにあるのかわからなくなった心に、
小さく光が灯るように──
あなたが あなたに戻れるように──
そんな願いを込めて書いています。
🌊 第4作目:『水のほうへ ―― 光と闇の法則・澪編』
がんばっているのに、なぜか息が苦しい。
ちゃんと話しているはずなのに、心がすり減っていく──
「強くなること」を選び続けてきた女性・澪が、
もう一度“自分に戻る”までを描いた、静かな再生の物語。
境界線・呼吸・安心感をテーマにした一冊です。
🌙 第3作目:『話してるのに伝わらない夫と、心がすり減る妻』
「どうしてこんなにすれ違うの?」
「話しているだけなのに、なぜ傷つくの?」
夫婦・パートナー間で起こる
見えない心理のズレを言語化し、
境界線の視点からほどいていく一冊。
🪞 第2作目:『光と闇の法則 ―― わたしを映す8つの鏡』
HSP気質、インナーチャイルド、自己肯定感の低さ──
心の奥にあるテーマを
「8枚の鏡」という物語構造で、やさしく見つめ直す本。
自分を責めるループから抜けたい人へ。
🥚 第1作目:『わたしと仲直りする優しいレッスン』
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『読むだけで少し楽になる』心のレッスン帳。
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答えを押しつけないこと。
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読むことで、
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そんな感覚を思い出してもらえたら嬉しいです。
よければ、あなたの本棚にも一冊、
今の心に合うものを迎えてもらえたら──。
📚 シリーズ全話はこちら
モノとチャトラの物語全話はこちら:
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