ある日の午後。
縁側でチャトラがのんびり寝転んでいると、
モノがすぐ横に腰を下ろした。
少し離れた柱のかげには、
ソラ君がやわらかく伸びて寝そべっていた。
目を閉じているようで、ふたりの様子には
静かに耳を澄ませている。
言葉を交わすでもなく、ただ同じ方向を見て座っている。
「……なんやろなぁ。静かなのに、落ち着く」
チャトラは心の中でつぶやいた。
モノは少しだけ尻尾を動かし、
チャトラの呼吸に合わせるように深く息を吐いた。
そのとき、
ソラ君のゆっくりとした呼吸が、
ふたりのリズムにそっと重なる。
三つの呼吸がひとつの波みたいに揃っていく。
胸の奥がふっとやわらかくなるのを
チャトラは感じた。
呼吸が合うと、心も合う
モノとチャトラは、ことばを使わずに呼吸を合わせていた。
ソラ君も、深い寝息でその場の空気をさらに静かに整える。
まるで「ここは安全だよ」と空気ごと伝えているみたいに。
まるで見えない糸でつながれているみたいに、
リズムがそろうと心も落ち着く。
「ああ、これが『だいじょうぶ』ってことなんやな」
チャトラは何も言わず、そっと目を閉じた。
モノの体温、
ソラ君のゆっくりとした呼吸、
同じリズムで動く胸。
それだけで十分だった。
非言語のあたたかさ
人と人との関わりも同じ。
呼吸がそろう、姿勢が似る、やさしい視線を交わす──
そんな非言語のサインは安心を生む。
それは迷走神経を通じて心身を落ち着かせる「コヒーレンス」のはたらき。
言葉がなくても、「ここは安全だ」と体が覚えていく。
チャトラは目を開けて、モノに視線を送った。
モノも静かに見返す。
その瞬間、
ソラ君がかすかに体勢を変えて、
ふたりのそばへゆっくり近づいた。
そしてなにも言わず、ただ静かに横たわる。
その静けさが、いちばんの会話になっていた。
ただそばにいること。
それが、最高の会話になっていた。
モノとチャトラより、あなたへ
ことばが出てこないときも、だいじょうぶにゃん。 呼吸やまなざしで、あなたの気持ちはちゃんと伝わっているんだにゃ。 そして誰かの安心も、きっとあなたの体に届いているはずだにゃ。周りの人でいつも安心している人は誰かにゃん?筆者のことば
非言語的同調(アタッチメント・アチューンメント)は、言葉を介さずに相手とつながりを感じられる大切な要素です。
たとえば、相手の呼吸のリズムに自然と合わせたり、視線を柔らかく交わしたり、同じ姿勢をとることで、心が落ち着いて「この人は安全だ」と感じやすくなります。
こうした非言語的な共鳴は、神経系の中でも安心を司る迷走神経を介して働きかけ、心拍や呼吸が安定していく現象──いわゆる「コヒーレンス」を生み出します。
その結果、交感神経の緊張が和らぎ、副交感神経が優位になり、安心感や信頼感が高まります。
親子やパートナー、カウンセリングなどの人間関係の中で、この非言語的同調がうまく起きていると「わかってもらえている」という実感が得られ、関係の温度は自然と上がっていきます。
逆に言葉でどれだけ説明しても、呼吸や姿勢、視線がちぐはぐだと「なんとなく落ち着かない」という違和感が残るものです。
つまり、安心や信頼は必ずしも言葉だけで築かれるものではなく、身体レベルの微細な同調によって支えられているのです。
今日の心のワーク
- 大切な人と一緒にいるとき、相手の呼吸や動作にそっと意識を合わせてみましょう。
- 言葉を交わさずに、安心や信頼を感じられる瞬間を探してみてください。
- 「言葉がなくても大丈夫」という体験を、自分の安心の記憶として大切にしましょう。


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