やさしさで溶けていく─すべてを受け容れる境地|猫物語87話

モノとチャトラの物語

夜が深まっていく。庭に差し込む月明かりは静かで、どこかやさしい。

ソラ君が残してくれた言葉が、まだチャトラの胸に響いていた。

──「ほんまの強さは、つながりを受け入れること」。

チャトラはずっと「強くなきゃ」と思って生きてきた。
泣いたら笑われる。弱さを見せたら置いていかれる。
そんな経験があったからこそ、気づけば「大丈夫、平気や」と強がるのがクセになっていた。

けれど、ソラ君の言葉を聞いた瞬間、胸の奥の氷みたいなものが、すこしずつ溶けていくのを感じた。

強がりの仮面が落ちるとき

「……わたし、ほんとは怖いんや」

チャトラは小さな声でつぶやいた。
モノがびっくりして顔を上げる。

「チャトラが? 怖いん?」

チャトラはうなずいた。
「ひとりになるのが怖い。見放されるのが怖い。……でも、それを見せたら嫌われるって思ってた」

言葉にした瞬間、目からぽろりと涙がこぼれた。
今までぎゅっと握りしめていた『怖さ』が、涙に変わって流れ出していく。

モノはそっと隣に寄り添った。

「チャトラ、泣いてええんやで。ぼくも怖くなるときあるもん」

その言葉に、チャトラの心がさらにやわらかくほどけていった。
やさしさを受け取ることは、弱さを認めることじゃない。
むしろ『ほんとうの勇気』なんやと気づいたのだった。

やさしさに溶けていく感覚

涙を流したあと、不思議と体が軽くなった。
頑なに張っていた肩の力が抜け、呼吸が深くなっていく。

「……なんやろ、からだがふわっとする」

チャトラは自分でも驚いた。
強がりを外したら壊れてしまうと思っていたのに、むしろ内側から温かさが広がってくる。

モノはにっこり笑った。

「それが『やさしさで溶けていく』ってことなんやない?」

チャトラははっとした。
ソラ君が言っていた「つながりを受け入れる」って、この感覚なのかもしれない。
やさしさに身をゆだねると、自分だけでは見つけられなかった安心がそこにあった。

すべてを受け容れる境地へ

その夜、チャトラは静かに空を見上げた。
涙の跡がまだ残っていたけれど、心は澄みきっていた。

「ソラ……ありがとう。わたし、少しずつでも、受け容れていけるようになる」

やさしさを拒まなくてもいい。
涙を隠さなくてもいい。
弱さを見せても、つながりは途切れない。むしろ深まっていく。

そう思えた瞬間、チャトラの中で『強さ』の意味が変わっていった。
強さは、固くなることじゃない。やさしさで溶けていくことなんだ。


モノとチャトラより、あなたへ

あなたは「弱さを見せたら嫌われるかも」と思ったことはないかにゃ?
でも本当は、その『弱さ』を見せられたときにこそ、人と人(猫と猫)とのつながりは深まっていくのにゃん。
チャトラのように、やさしさに身をゆだねる勇気を持てたとき、新しい安心感が広がっていくんだにゃ。


筆者のことば

心理学では、共感や寄り添い、やさしさを受け取る支えを 「情緒的サポート」 と呼びます。
これは単なる慰めではなく、ストレス反応を和らげ、自律神経を整え、心の回復力(レジリエンス)を高めることが研究でも示されているのです。

特徴的なのは、「どれだけ助けてもらったか」よりも「いざとなれば支えてもらえる」と感じられることの方が健康に強く結びつく点です。
また、共感が欲しいときにアドバイスばかりを受けると逆効果になることを知っていますか?
・話を聞いて欲しいだけなんだよね
・アドバイスしてもらったことはもう十分考えているんだよね
・これやった?あれやった?と言われてげんなりした
・クソバイス・・・
(そんなふうに感じたことありませんか?)
このようにニーズと支援の種類が合っていることも大切だとされています。

チャトラが涙を流せたのは、まさに情緒的サポートが働いた瞬間でした。
「やさしさに溶けていく」とは、弱さを見せて依存することではなく、しなやかに回復する力を取り戻すこと。
ソラ君の「つながりを受け入れてええんやで」というメッセージは、科学的にも理にかなった『心の支え』なんだと思います。

 

 

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ひとりで抱え込みそうなとき。
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