また、強がってしまった夜 | 猫物語88話

カウンセリング体験

夜が更けて、屋根裏に静けさが落ちてきた。
昼間はあんなに動いて、笑って、平気な顔してたのに。
チャトラは、毛布みたいに暗い夜に包まれた瞬間、ふっと胸が重くなるのを感じた。

「……あれ?」

胸の奥が、きゅっと固くなる。

言葉にならない疲れが、波みたいに戻ってきた。

窓の外には星。
部屋の隅には、モノの丸い背中。
それだけで安心できるはずやのに――

チャトラは、つい、いつものクセを出してしまう。

「……なんでもない。だいじょうぶやで」

口から出た言葉に、チャトラ自身がいちばん驚いた。

だいじょうぶじゃないのに。

ほんとは、ぎりぎりなのに。

強がりが出てくる理由

モノが、ゆっくり顔を上げる。

「チャトラ、ほんとに?」

チャトラは一瞬、息が止まった。
『ほんとに?』って聞かれると、胸の奥の鍵が、カチッと外れそうになる。

「……うん。大丈夫やって」

けど、その声は少し震えていた。
チャトラは思った。
強がりって、かっこつけじゃない。

生きるために覚えた鎧や。
泣いたら笑われる。
弱さを見せたら置いていかれる。

そんな記憶があると、心は勝手に先回りして守ろうとする。
『平気って言っとかな』
『迷惑かけたらあかん』
『ちゃんとしてなきゃ』

頭の中の警備員が、今日も走り回ってる。

気づけたら、もう半分戻ってる

チャトラは、ふっと肩を落とした。

「……モノ。わたし、またやってまった」

モノが首をかしげる。

「また?」

「『平気なふり』や。
昼間、みんなの前で、元気にしとったやん?
ほんとは、ちょっとしんどかったのに」

モノは、責めるでもなく、驚くでもなく、ただ静かに寄ってきて、チャトラの横に座った。

「……そうなんや」

それだけ。

その短い返事が、チャトラの胸をほどいた。

『説明しなくてもいい場所』が、ここにある。

チャトラは息を吸って、吐く。

吐く息が長くなるほど、胸の固さがゆるむ。

ソラ君の言葉が、ふっと内側で響いた。

──ほんとの強さは、つながりを受け入れること。

チャトラは、小さくうなずいた。

「……強がりって、やめなあかんって思うほど、余計しんどいな」

モノが、ぽそっと言った。

「やめんでもええんちゃう?

強がりが出てきたら、『守ってくれてありがと』って言うたらええ」

チャトラは目を丸くした。

「え……?」

「強がりって、悪もんちゃうやろ。

昔のチャトラを守ってきたんやから。

せやけど、いまはもう――ここに、ぼくらがおる」

その言葉で、チャトラの目から涙がぽろっと落ちた。

「……うん」

涙は止めなくてよかった。

止めようとしないほうが、呼吸が楽だった。

夜に戻ってくるのは、弱さじゃない

チャトラは鼻をすすって、笑ってしまった。

「わたしさ、回復って、もっと一直線やと思ってたわ。

一回泣けたら、もうずっと大丈夫、みたいな」

モノも少し笑う。

「そんなヒーローみたいにはいかんて。

揺れて、戻って、また揺れて、また戻る。

それが普通やろ」

チャトラは、胸に手を当てた。

ここが、さっきよりやわらかい。

「……また強がった。でも、気づけた。

それって、前よりは進んどるってことなんかな」

モノは、しっぽで床をとん、と鳴らした。

「進んどるに決まっとるやん。

気づけるって、いちばん強いで」

チャトラは、ゆっくり目を閉じた。
闇の中に、やさしい温度が残っていた。

『ひとりで平気なふり』をしなくても、ここは崩れない。
その事実が、じんわり胸に染みていった。

モノとチャトラより、あなたへ

「また戻ってしまった」って思う夜、あるかにゃ?
でもそれは、失敗じゃないにゃ。
回復は、一直線じゃなくて、波みたいなもの。

揺れた日があっても、気づけた時点で、もう戻る力が育ってるんだにゃ。
強がりが出てきたら、責めるんやなくて、
「守ってくれてありがとう」って言ってあげてほしいにゃ。

あなたの心は、ずっとあなたを守ってきたんだにゃ。

筆者の言葉

「強がり」は、性格や意志の弱さではなく、
心理学的には自己防衛反応として説明されることが多い行動です。

人は、過去に
・弱さを見せたときに否定された
・泣いたことで距離を置かれた
・助けを求めて応えてもらえなかった

といった経験を重ねると、
「弱さを見せる=危険」「迷惑をかける=拒絶される」
という学習が、無意識のうちに形成されていきます。

その結果、心は自分を守るために、
「平気なふりをする」
「大丈夫だと言い切る」
「感情を感じる前に切り離す」

といった反応を選ぶようになります。

このとき背景にある感情は、
不安・恐れ・孤独感・見捨てられ不安です。

つまり、強がりの奥には、
「傷つきたくない」
「つながりを失いたくない」
という、非常に切実な願いが隠れています。純粋な願いですよね。

回復において大切なのは、
強がりをやめることではなくて、

「強がりが出てきたことに気づき、責めずに戻ってこられること」

です。

これが、心の安全基地が育ってきたサインです。
安心できる関係性の中では、
防衛反応は少しずつ役目を終え、
「感じても大丈夫」「弱さを出しても関係は壊れない」
という新しい体験によって、更新されていきます。

強がりは、かつてのあなたが生き延びるために身につけた知恵です。
いま、それに気づけているということ自体が、
すでに回復が進んでいる証拠だと言えるでしょう。

それが、心の回復の力になります。

心のワーク

  1. 「いま強がってるかも」と気づく(気づけたら合格。変えようとしなくてOK)
  2. 胸に手を当てて、吐く息を長くする(3回)
  3. 自分に一言だけかける(『今日も守ってくれてありがとう』/『気づけたから大丈夫』のどちらか)

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心にそっと寄り添うストーリーと、心理学のエッセンスをぎゅっと詰め込んだ 4冊をKindle出版しています。

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悩んだとき。
ひとりで抱え込みそうなとき。
まだ「相談」と呼べるほど、言葉になっていないとき。

自分の本音がどこにあるのかわからなくなった心に、
小さく光が灯るように──
あなたが あなたに戻れるように──

そんな願いを込めて書いています。


🌊 第4作目:『水のほうへ ―― 光と闇の法則・澪編』
がんばっているのに、なぜか息が苦しい。
ちゃんと話しているはずなのに、心がすり減っていく──
「強くなること」を選び続けてきた女性・澪が、
もう一度“自分に戻る”までを描いた、静かな再生の物語。
境界線・呼吸・安心感をテーマにした一冊です。


🌙 第3作目:『話してるのに伝わらない夫と、心がすり減る妻』
「どうしてこんなにすれ違うの?」
「話しているだけなのに、なぜ傷つくの?」
夫婦・パートナー間で起こる
見えない心理のズレを言語化し、
境界線の視点からほどいていく一冊。


🪞 第2作目:『光と闇の法則 ―― わたしを映す8つの鏡』
HSP気質、インナーチャイルド、自己肯定感の低さ──
心の奥にあるテーマを
「8枚の鏡」という物語構造で、やさしく見つめ直す本。
自分を責めるループから抜けたい人へ。


🥚 第1作目:『わたしと仲直りする優しいレッスン』
完璧主義、罪悪感、自分責めに疲れてきた方へ。
セルフ・コンパッション(自分への思いやり)という
新しい選択肢を、具体的な実践とともに届ける
『読むだけで少し楽になる』心のレッスン帳。


📚 どの本も共通しているのは、
答えを押しつけないこと。
無理に変えようとしないこと。

読むことで、
「あ、戻ってきたかも」
そんな感覚を思い出してもらえたら嬉しいです。

よければ、あなたの本棚にも一冊、
今の心に合うものを迎えてもらえたら──。

🌙 無料カウンセリング、LINE・メールで受付しています。

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あなたのままで、安心して話せる場所、ここにあります。
(守秘義務がありますので、相談内容はどこにも漏れません)

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