強がらなくても、ここにいていい朝|猫物語89話

声が大きい人が苦手なHSPの方へ癒しのロシアンブルーっぽい猫 モノとチャトラの物語

朝の光が、屋根裏の窓から静かに差し込んでいた。

チャトラは、まだ少し重たい体を引きずるように目を覚ました。

「……朝、か」

昨日あんなに泣いたのに、世界は何事もなかったように朝を連れてくる。

そのことが、少し不思議で、少し救いでもあった。

隣を見ると、モノはもう起きていて、窓辺で外を眺めていた。

「モノ……おはよう」

声をかけると、モノは振り返って、やさしくうなずいた。

「おはよう、チャトラ。……よく眠れた?」

チャトラは一瞬、答えに詰まった。

「……ううん。正直言うと、あんまり」

でも、その言葉を口にしても、胸はぎゅっとならなかった。

それどころか、少しだけ呼吸が楽になるのを感じた。

モノは何も言わず、そっと隣に座った。

それだけで、「大丈夫な空間」ができあがる。

チャトラは、昨日のことを思い出しながら、ぽつりとつぶやいた。

「わたしな……また強がってまったんや」

モノは否定も肯定もせず、静かに耳を傾ける。

「ほんまは怖かったのに、
『平気』『大丈夫』って言わなあかん気がして……」

そう言いながら、チャトラは自分の胸に前足を当てた。

「でもな。昨日は……気づけたんや」

モノが少しだけ目を細める。

「気づけたって?」

「強がってる自分に。
それって……守ろうとしてたんやなって」

その言葉は、責める調子ではなかった。

むしろ、初めて自分に向けられた理解の声だった。

モノは、ゆっくりとうなずいた。

「それ、すごいことやで」

「え?」

「強がりに気づくってことはな、
もう『戦わんでもええ場所』に来とるってことや」

チャトラの胸が、じんわり温かくなる。

「……じゃあ、わたし、もう強くならんでもええんかな」

モノは少し考えてから、こう答えた。

「強くならんでもええ。
でもな、『戻れる』ようにはなっとる」

「戻る?」

「強がってもしもても、
『あ、いま守ろうとしてたな』って戻ってこられる場所がある。
それが、ほんまの安心やと思う」

その言葉を聞いた瞬間、

チャトラの中で、ソラ君の声がふっと重なった。

──つながりを、受け入れてもいいんだよ。

チャトラは、深く息を吸った。

胸の奥に残っていた緊張が、朝の光と一緒にほどけていく。

「……なぁ、モノ」

「ん?」

「今日な。
わたし、強がらんと過ごしてみてもええかな」

モノは、にっこり笑った。

「もちろんや。
強がってもいいし、強がらんでもいいし。
どっちでも、ここにおってえいいんやし」

チャトラは目を閉じた。

朝の音、光、モノの気配。

世界は、ちゃんと自分を迎えてくれていた。

「……そっか」

強くなくてもいい。

完璧じゃなくてもいい。

ただ、戻ってこられればいい。

その朝、チャトラは初めて、
「強がらない自分で始まる一日」を生き始めた。

モノとチャトラより、あなたへ

「また強がってしまったなぁ」そんなふうに自分を責めてしまう夜、ないかにゃ?
でも、強がりってあなたが弱いから出てくるだないにゃ。

ほんとは怖かったり、さみしかったり、誰かを失いたくなかったり──
大事なもんを守ろうとしてきた証なんにゃ。

だから、気づけただけでも十分えらいんにゃ。

強がってもいいし。また戻ってこれたら、それでいいにゃん。

ここは、強がらんでもいていい場所だにゃ。あなたは今日も、ちゃんと受けとめられてるにゃ。

筆者の言葉

「強がり」は性格の問題や意志の弱さではなく、
心理学的には自己防衛反応(defense mechanism)のひとつとされています。

人は過去に
・弱さを見せて否定された
・助けを求めたときに応えてもらえなかった
・感情を表現したことで関係が壊れた
といった経験をすると、無意識に

「強く見せていれば安全」
「平気なふりをすれば愛される」

という信念を身につけていきます。
これが、強がりの背景にある心理です。

特にHSP気質や共感性の高い人は、
人間関係の空気や他者の感情を敏感に察知するため、
「自分が崩れることで周囲に迷惑をかけてしまう」という思いを抱きやすい傾向があります。

しかし近年の愛着理論やトラウマ研究では、
回復の鍵は「強くなること」ではなく、
安全な関係の中で感情をそのまま体験し直すこと
だと示されています。

強がりに気づき、
「これは守ろうとしていた反応だった」と理解できた瞬間、
私たちの神経系は『戦闘モード』から『安心モード』へと移行し始めます。

チャトラが迎えた朝は、
強がりをやめた朝ではなく、
強がっても戻ってこられる自分に気づいた朝でした。

それは、心が成熟し始めたサインでもあります。

もしあなたが今日、「また強がってしまった」と気づいたなら──
それは失敗ではなく、回復の途中にいる証拠です。

戻ってこれる場所を、すでにあなたは見つけ始めているのです。

 

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悩んだとき。
ひとりで抱え込みそうなとき。
まだ「相談」と呼べるほど、言葉になっていないとき。

自分の本音がどこにあるのかわからなくなった心に、
小さく光が灯るように──
あなたが あなたに戻れるように──

そんな願いを込めて書いています。


🌊 第4作目:『水のほうへ ―― 光と闇の法則・澪編』
がんばっているのに、なぜか息が苦しい。
ちゃんと話しているはずなのに、心がすり減っていく──
「強くなること」を選び続けてきた女性・澪が、
もう一度“自分に戻る”までを描いた、静かな再生の物語。
境界線・呼吸・安心感をテーマにした一冊です。


🌙 第3作目:『話してるのに伝わらない夫と、心がすり減る妻』
「どうしてこんなにすれ違うの?」
「話しているだけなのに、なぜ傷つくの?」
夫婦・パートナー間で起こる
見えない心理のズレを言語化し、
境界線の視点からほどいていく一冊。


🪞 第2作目:『光と闇の法則 ―― わたしを映す8つの鏡』
HSP気質、インナーチャイルド、自己肯定感の低さ──
心の奥にあるテーマを
「8枚の鏡」という物語構造で、やさしく見つめ直す本。
自分を責めるループから抜けたい人へ。


🥚 第1作目:『わたしと仲直りする優しいレッスン』
完璧主義、罪悪感、自分責めに疲れてきた方へ。
セルフ・コンパッション(自分への思いやり)という
新しい選択肢を、具体的な実践とともに届ける
『読むだけで少し楽になる』心のレッスン帳。


📚 どの本も共通しているのは、
答えを押しつけないこと。
無理に変えようとしないこと。

読むことで、
「あ、戻ってきたかも」
そんな感覚を思い出してもらえたら嬉しいです。

よければ、あなたの本棚にも一冊、
今の心に合うものを迎えてもらえたら──。

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「わたし、このままでいいのかな?」
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そんなモヤモヤも、心の奥にある『あなたの願い』も、大切に聴かせてくださいね。

── ひとりで抱え込まなくて、大丈夫。
あなたのままで、安心して話せる場所、ここにあります。
(守秘義務がありますので、相談内容はどこにも漏れません)

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