ソラ君と声の大きい人(後編)─トラウマ記憶の癒し方|猫物語35

子猫が人に何かを訴えている写真 モノとチャトラの物語

「ソラ君、今日……ちょっと声、震えてなかった?」

チャトラが、モノと二匹でベランダに出たときに、ぽつりと言った。

「さっきの近所の人……少し声が大きかったやろ?」

モノはうなずいた。
「うん。でもな、ソラ君、『平気です』って笑ってたで」

 

「わたしも聞こえた。でも……あの笑顔、ちょっと苦しそうやった」
ふわ、と夜風が通り抜けた。

「ソラ君、小さい頃、誰かに怒鳴られたことあるんかな?」
モノがそっと言った。

「うん……ちょっとだけ聞いたことある。『大声がこわい』って。
それ以上は、なんも言わんかったけど」
ふたりとも黙り込んだ。

夜の静けさの中に、ソラの記憶が滲んでいるような気がした。


その夜。
ソラ君は、一人で窓際に座っていた。月明かりが、うっすらとソラの毛並みに影を落としている。

「ソラ君……」

モノが声をかけると、ソラ君は振り返り、微笑んだ。

「……昔、あったんだ。大声で怒鳴られること」

「……そっか」

 

「何かあるたびに、びくってして……『怒られる』って思っちゃうんだよね」

モノもチャトラも、何も言わずに、ただ隣に座った。
しばらくの沈黙のあと、ソラ君がぽつりと言った。

「『怖かった』って、言えるようになるまでに……すごく時間かかった」

「……言ってくれて、ありがとう」
チャトラの目が、やさしく細められた。

「記憶ってさ、なくなったわけじゃなくて……
ずっと身体のどこかに残ってるんだと思う」

「うん。思い出したくないのに、急に浮かぶよな。においとか、声とか、空気とか」
モノがそっと言った。

ソラ君は目を閉じて、呼吸を深くした。
「でもね、今は……ふたりがいるから。大声聞いても、逃げ出さずにいられる」

「ソラ君……」

 

「『だいじょうぶ』って言われた記憶も、積み重なってきてる。たぶん、それが、癒しってことなのかなって」

モノは、静かにうなずいた。

「そうやな。記憶は消せへんけど、『今の安全』を、身体が思い出していけるんやと思う

「だから……これからも、そばにいてね」

「もちろんや」

チャトラが、ふふっと笑った。

「うちら、ずっとそばにおるで。怖かった記憶よりも、あったかい記憶でいっぱいにしてこ」


モノとチャトラより、あなたへ

トラウマ記憶とは、『心が傷ついた経験』が、無意識に身体や感情の反応に残ることにゃん。

大きな声を聞いてびくっとする。
何気ない言葉で心がざわつく。
それは「過去に似た体験」に対する防衛反応かもしれないんだにゃ。

でも、新しい経験によって、記憶は上書きされていく。

誰かの「だいじょうぶ」という声。
信頼できる人との静かな時間。
そうした体験が、少しずつ、『もう安心していいんだ』と、心と身体に教えてくれます。

どうか、あなたも今の自分にやさしく、
安心できる関係の中で、『記憶の癒し』を育てていけますように。

筆者のことば

私たちの「心」と「身体」は、思っているよりずっとつながっています。

とくにトラウマ記憶は、“思い出したくない”記憶であっても、神経系の反応に残ることがあります。
それが、何気ない日常で、ふいに身体の反応として表れることがあるのです。

ちょっとした音、匂い、雰囲気で過去の体験を“現在”と錯覚し、同じ身体反応が再現される。これを「トラウマの再体験」または「トリガー反応」と呼び、脳ではなく身体が覚えている状態とも言えるのです。

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そんなとき、「また過去に戻ってる」と責めるのではなく、
**“今は大丈夫”**という安全を、自分に何度も伝えてあげてください。

そのくりかえしが、過去を塗りかえていきます。
どうかあなたの中にも、あたたかい記憶がひとつ、またひとつ、増えていきますように。


心のワーク

  1. 自分がびくっとする場面、反応してしまう場面をひとつ思い出してみてください。

  2. そのときの身体の感覚(息苦しさ、胸のざわつきなど)にそっと意識を向けてみましょう。

  3. 自分自身に「だいじょうぶだよ」と声をかけてあげてください。

  4. 可能なら、その場で安心できる誰かや場所を思い浮かべてみてください。

  5. 少しずつで大丈夫。トラウマ記憶に“安心の記憶”を重ねていく練習を続けてみましょう。

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悩んだとき。
ひとりで抱え込みそうなとき。
まだ「相談」と呼べるほど、言葉になっていないとき。

自分の本音がどこにあるのかわからなくなった心に、
小さく光が灯るように──
あなたが あなたに戻れるように──

そんな願いを込めて書いています。


🌊 第4作目:『水のほうへ ―― 光と闇の法則・澪編』
がんばっているのに、なぜか息が苦しい。
ちゃんと話しているはずなのに、心がすり減っていく──
「強くなること」を選び続けてきた女性・澪が、
もう一度“自分に戻る”までを描いた、静かな再生の物語。
境界線・呼吸・安心感をテーマにした一冊です。


🌙 第3作目:『話してるのに伝わらない夫と、心がすり減る妻』
「どうしてこんなにすれ違うの?」
「話しているだけなのに、なぜ傷つくの?」
夫婦・パートナー間で起こる
見えない心理のズレを言語化し、
境界線の視点からほどいていく一冊。


🪞 第2作目:『光と闇の法則 ―― わたしを映す8つの鏡』
HSP気質、インナーチャイルド、自己肯定感の低さ──
心の奥にあるテーマを
「8枚の鏡」という物語構造で、やさしく見つめ直す本。
自分を責めるループから抜けたい人へ。


🥚 第1作目:『わたしと仲直りする優しいレッスン』
完璧主義、罪悪感、自分責めに疲れてきた方へ。
セルフ・コンパッション(自分への思いやり)という
新しい選択肢を、具体的な実践とともに届ける
『読むだけで少し楽になる』心のレッスン帳。


📚 どの本も共通しているのは、
答えを押しつけないこと。
無理に変えようとしないこと。

読むことで、
「あ、戻ってきたかも」
そんな感覚を思い出してもらえたら嬉しいです。

よければ、あなたの本棚にも一冊、
今の心に合うものを迎えてもらえたら──。

📚 シリーズ全話はこちら

モノとチャトラの物語全話はこちら:
https://kyoko.work/category/monotochatora/

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HSP気質で、人との距離感に悩んだり、
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「わたし、このままでいいのかな?」
「ちゃんとできない自分を責めちゃう」
そんなモヤモヤも、心の奥にある『あなたの願い』も、大切に聴かせてくださいね。

── ひとりで抱え込まなくて、大丈夫。
あなたのままで、安心して話せる場所、ここにあります。
(守秘義務がありますので、相談内容はどこにも漏れません)

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